その子の本当の笑顔を ー こやま小児科・小山佳紀先生が子どもたちに伝えてきたこと

コラム

だいじにしていること

不登校や引きこもりで相談に来られたときに、大事にされていることは?

「その子どもの本当の笑顔です」

親子で一緒に話をするのではなく、子どもはプレイセラピーで遊び、その間に別室でお母さんの話を聴きます。

どうしても学校に行かせたい、と不登校をネガティブにとらえているお母さんには、ポジティブにとってもらうよう宿題を出して、1週間後に来てもらいます。

すると、お母さんの表情が変わって、嬉しそうな顔になっているんです。まず、その変わったお母さんの表情を子どもに見せる。そうすると、その後、子どもにも変化が現れることがあります。

一方で、もう学校には行けないのではないかと、あきらめているようなお母さんには、こう伝えます。

「学校は、勉強より友達をつくりに行くところでもあります。放課後等デイサービスなど、居場所を見つけたら毎回ほめてあげてください。その間、学校の話はしません」

そして、お母さんにもこう話すそうです。

「もし、お母さんが行くところが一か所しかなかったら、息が詰まるでしょう。子どもも同じなんです」

居場所は、一つでなくていい。

学校だけが居場所ではない。

その子が安心して過ごせる場所、人とつながれる場所を見つけることを大切にしています。実際、不登校で来院した子どもたちの多くは、例えば中学に登校できなかったとしても通信制高校に入り、大学に進学したり、就職し、社会で活躍していたりします。その子にあった居場所(選択肢)を多数、具体的に提示できることも私の役割だと思っています。

「巷には『不登校の予防』などという、まるで悪いことの予防のような捉え方をしている人がいますが、私は全くそうではないと思っています。

自己主張できたこと、それも大事なことです。

『今までよく生きてきたね』と声をかけています」

ご自身の少年時代

「私自身、小学校の時、親に否定され、勉強もできず、学校へ行けなかったんです。中学生の時、自傷行為をしたこともありました」

そんな小山先生を救ったのが、中学時代の恩師でした。

「おまえのようなヤツは、目に入れても痛くない」自分を丸ごと肯定してくれた恩師の言葉。

そこから、

「私のような気持ちを抱えて生きている子どもたちの代弁者になりたい」

と思うようになりました。

最初は教師を目指しました。

しかし、「より深く子どもの人生に伴走できる医師になりたい」と、医師を目指すようになりました。

その道のりも、決して平坦ではありませんでした。

医学部入試での失敗、大学での留年、国家試験の不合格。

何度もつまずき、回り道をしてきたからこそ、今、苦しんでいる子どもたちに伝えられる言葉があります。

「私はエリートではありません。何度も落ちこぼれ、回り道をしてきました。

だからこそ、今苦しんでいる子に、

『三日坊主でもいい』
『何度まちがえてもいい』
『生きているだけで丸もうけや』

と本気で言えるんです(笑)」

診療が終わる時間まで長時間待って、進路相談に一人で来る高校生たちもいます。

「まるで先輩みたいに、学校の先生みたいに思ってくれているんでしょうね」

そう笑う小山先生。

その姿を聞いていると、子どもの人生に伴走する医師になりたいという、先生自身の夢が、まさに今、形になっているのだと感じます。

学校に行くことだけが、その子の人生の答えではない。

その子が自分らしく笑える場所を見つけ、自分の人生を歩いていけるように、一緒に考え、寄り添い続ける。

小山先生が長年、子どもたちに伝えてきたのは、そんなメッセージでした。

こどもたちへ

こやま小児科は、2026年9月末をもって閉院されます。

長年にわたり地域の子どもたちと保護者に寄り添ってきた診療所がなくなることは、寂しく感じる方も多いでしょう。

しかし小山先生は、閉院を前に、子どもたちのこれからを考え、信頼する10人以上の医師のもとへ、一人ひとり引き継ぎのお願いに行かれたそうです。

「この子たちを、これからもよろしくお願いします」

そんな先生の姿を想像すると、胸が熱くなります。

26年間、子どもたちの人生に伴走してきた小山先生。

その思いは、診療所が閉じても、きっと次の先生方へ、そして小山先生のもとから巣立った子どもたちへと受け継がれていくことでしょう。

『三日坊主でもいい』
『何度まちがえてもいい』
『生きているだけで丸もうけや』

小山先生が子どもたちに届けてきた想いを、私たちも大切に心に残しておきたいと思います。 

―2026.8.18 こやま小児科診察室にて

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